老化と発癌

高齢になると癌の発生が増えると考えられていますが、実は逆で癌の増殖を抑えるために細胞が老化するのかもしれません。

細胞分裂には新陳代謝という良い側面と,誤ったゲノムを持つ細胞がふえてしまうという悪い側面の両方の意味合いがありますが、いずれにしてもサイクリン依存性キナーゼ(CDK)が分裂を促進しています。
この誤った細胞増殖を引き起こすのがフリーラジカルや放射線発癌物質などによる DNA の損傷ですが、実際は発癌物質などによらなくとも通常の細胞分裂の際に遺伝子の複製エラーが起きています。

そして
この誤った細胞増殖を防ぐのが老化であると考えられています。

この DNA の損傷を感知する経路としては
ATM →P 53→ P 21という遺伝子経路がありその結果CDKが抑制されて細胞分裂が抑えられます。
もう一つの経路として,細胞増殖シグナルが入ると P16-CDK- RB 遺伝子経路が活性化するという経路がありこちらが DNA 損傷に対するメインの経路のようです。

この 経路に含まれるP 53遺伝子と RB 遺伝子はがん抑制遺伝子の代表格ですが、RB 遺伝子が働かないと分裂抑制(老化)ができないわけで、裏を返すとがん抑制遺伝子 RB は老化を進める方向に作用するということになります。
そこから得られる結論が冒頭の言葉となります

2020.6.3