パーキンソン病について

「パーキンソン病について」

パーキンソン病とは 中脳にある黒質という部分の神経細胞が徐々に減少する病気で代表的な神経難病の一つです。1000人に一人程度の発病率といわれています。

よく似た病名にパーキンソン症候群という病気がありますが、こちらは中脳ではなく大脳の基底核というところが障害されて発症します。中脳黒質と基底核は神経細胞が直接つながっているためよく似た症状を示しますが、原因や治療法が異なるので分けて考えた方がよいでしょう。 

[パーキンソン病の症状] 片方の手の振戦(ふるえ)で発病することが多いのですが、次第に動作緩慢、細かな動作が下手になる、筋肉の固縮(肘関節を伸ばす際にガタガタと抵抗を感じます),仮面様顔貌(表情が乏しい)などの症状が加わってきます。さらに便秘や発汗の異常などの自律神経症状が見られることもしばしばです。歩行は小刻みで,ときにつんのめるように歩行が加速してしまう突進歩行という状態になります。また、最初の一歩がなかなか踏み出せないすくみ足が見られることもありますが、廊下にラインを引いたり、かけ声をかけながら歩くと改善することが知られています。原則的に高度の認知症を来すことはありませんが、判断に時間がかかったり、思考が硬直化することはよく見られます。脳梗塞が多発するパーキンソン病とよく似た症状を示すことがありますが(パーキンソン症候群)、症候群ではパーキンソン病には有効なLドーパという薬が効かないこと、ふるえはそれほど目立たないこと、歩行は前後には小刻みでも左右には足を広げることなどである程度区別することが可能です。パーキンソン病の進行度はYahr(ヤール)の分類で表しますが、おおまかに言うとⅠ度ではふるえなどが片側だけにみられ、Ⅱ度ではそれが両側にひろがり,Ⅲ度では姿勢が崩れたときに転びやすくなり、Ⅳ度ではつかまりながら歩くレベル、Ⅴ度では車いすか寝たきりの状態となります。頭部CTでは通常異常は認めませんが、MRIのT2強調画像では中脳黒質の信号強度が変化することがあります。

近年DATスキャンという検査により格段に診断精度が上がりました。

[パーキンソン病の原因]中脳黒質の細胞が減少すると脳内のドーパミンという神経伝達物質が減るために発病することまではわかっていますが、なぜ中脳の細胞が減るのかはわかっていません。一時期MPTPという薬物が原因物質と疑われたことがありましたが現在ではほぼ否定されています。但し生活環境にある何らかの有害物質が原因とする説は根強く残っています。一方パーキンソン症候群の大半は脳梗塞や向精神病薬が原因ですが、まれに一酸化炭素中毒や脳炎後の後遺症として発病することもあります。

[治療法]脳内ドーパミンが欠乏するのでその前駆物質のLドーパの内服治療が中心となりますが,Lドーパは長年使っていると効果が薄れること,不随運動などがおきやすいことから 直接ドーパミンを増やすのではなく、ドーパミン作動薬という薬で同じような効果を期待する治療もよく行われます。これらを併用することによりLドーパの用量を減らすことが可能です。但し一部のド-パミン作動薬では心臓弁膜症を起こすことがわかったため第一選択薬からはずれました。また、最近では外科的に大脳基底核という部分を手術したり,電極を埋め込んで刺激したりする治療も行われています。体外から頭部を磁気刺激するリハビリ法も開発されました。海外では自分の副腎や交感神経節を脳に移植する手術が行われることもあります。難病の中では多くの治療法が確立されている病気と言って良いでしょう。